クリエイティブ革命

社長直轄で新設してもらった部署で私は企画を担当していたのだが、営業の数字が悪いからという事で半年後も堂々巡りの営業会議に同席していた。そのうち、印刷は全てが受注生産であるためこちらから売りに行く体制を作らないと問題は解決しないと感じ始めた。なにしろ受注生産は相手にニーズがない限り売れない。例えば飲み物を売っている店は、のどの渇きを訴求し、客に「のどが乾いていたんだ」と気づかせて初めて商品を売る事ができるのに、印刷会社はお客さまに「なにか印刷はないですか?」しか言わない。

そこで考えついたのが、印刷物に金額をつけて売るという手法である。仕事をもらう営業ではなく、「セールス」という方法がそれまでの印刷会社には存在しなかったからだ。27歳になった私は、セールスがない業界だからこそセールス部隊を造った印刷会社だけが現状を打破できると考えた。

最初に提案したのが、デザイン・画像・文章などの素材がパッケージ化された商品「会社案内シリーズ」。それを営業会議で提案した。

原田「毎月同じ事を言ってみなさんアホじゃないですか?」
部長「なんだって!?誰がアホだ!営業したことないくせに」
原田「半年同じ事をやっていて進歩がないのはどうなんですか?」
部長「何かやり方があるのか?」
原田「印刷には価格がないのでセールスができず、顧客のニーズを掘り起こすことができません。他の業界は商品が前提にあって商品を売るという概念に基づいてセールスを行っています。印刷でもセールス戦略を考えたらどうでしょう?」
部長「お前こそアホか!印刷は相手の腹を探りながら価格を決めるから儲かるんだ。」

せっかくの提案は一蹴された。まさにその反応そのものがナンセンスだと思ったが、営業連中からは総スカンをくらって「そんな物売れない」と言われ、「それならいいです」とその時はあっさり引き下がった。

そもそも、金額が定まらないと求められるクリオリティが判断できない。良いコピーやデザインは価値に応じて決定されるのに、価格設定がはっきりしない事でコピーやデザインの要求基準が不明瞭になってしまう。そういった状況下でディレクションを制作担当者に丸投げしてしまうため、結局は制作者の自己満足の作業につながってしまう。ひいては作業自体に価値がなくなってくる。

私は逆に定型の金額で売る中での良いデザインということになると、これが55万デザイン、100万デザインという設定になって、デザインやコピーに価値が生まれると思った。つまり、クリエイティブをイマジネーションという世界ではなく、ある一定のボーダーを決めたガイドラインの世界に当てはめて初めて、そこにクオリティが備わってくると考えたのだった。
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