Story 04 目次

Chapter 06:ニセモノへの先手

無事3日間のイベントも終了し、来場者も期間内20万人を超え、警備体制や管理体制には多くの反省を残すものの一様に高評価であった。またメンバー各自は多くの成果を得ることとなる。

それから3ヶ月が経過し、突然福山の元に江田島から電話が入る。

福山さん、最近急に販売が低下してきてもう飽きられたのかと思っていたのですが、
どうやら類似品がどんどん出てきて、当社の半額程度で販売をしてるようなのです。

それは困ったものですね。

しかも、デザインは当社の柄を模倣した型押し品です。
質は悪く〈SAMON〉の価値を落とすことにもなっていって・・・
相談する先がなく、また福山さんを頼ってしまい申し訳ありません。

いえ、それは良いのですよ。
さて・・・これは有名税とも言えますが、対策はいくらでもあります。

本当ですか!

最初にお会いした際に〈SAMON〉の名称を他の誰かが使っているか調べましたね。

はい。

その際に私の方で商標権と意匠権の取得手配をさせて頂きました。
登録料をお支払い頂く時、「高いですね」と言われていたのを覚えておられますか。

まだ販売も始まっていないのに、
20万円以上も支払うのはいかがなものかと正直不安でしたので・・・。

それが今となっては大きく効果を発揮してくるのです。
〈SAMON〉は、名前とそのデザイン性を国が権利と認めてくれています。
そのため、類似品の販売差止めを行なうことができます。

そうなんですか・・・安心しました。

今からその手続をしましょう。
弁護士に依頼するにあたり費用は数万円かかりますが、大丈夫ですか。

もちろん!
〈SAMON〉の価値を下げないためにも、よろしくお願いします。

福山は知人の弁護士に依頼し、江田島の了解を得た上で差止め請求を各社へ送りつけた。同業者は途端に販売を中止し、再び〈SAMON〉の売上は回復していくのであった。

それから1年後、2年目のイベント初日に、福山は江田島を訪ねて砂紋と夕日の街へ足を運ぶ。
江田島の会社は年商2億を超える規模に成長。東京にも出店し、財布、バックの他にライダースーツや帽子までバリエーションを広げ、レザー専門ブランドとしては業界で少しは知名度を獲得できるまでになっていた。
そして、2年目のイベントが始まる―

まさか、ここまで会社が大きくなるとは夢にも思いませんでした。
これから〈SAMON〉のレザーブランド・メーカーとして商品開発に全力を注いで
いきます。
スタッフも20名に増え、ネット担当者も専属で置くことができました。

これからが本当の勝負ですね。
常に追いかけられる存在になったので、課題は山積していきますよ。
でも、この地とこのデザインを変わらず大切にし続ければ
必ず明日は明るくやってくると思います。

福山さんには大変お世話になりました。
感謝しても仕切れないほどです。
本当に、本当にありがとうございます。

お役に立てたようで何よりです。

なぜ福山さんは無償で、こんなにも私とこの地を応援してくれるのですか?
初めてお話しした時からずっと疑問に思っていました。

実は、亡くなった妻がこの街の出身で、思い出もたくさんありまして、
何かご支援ができればと思ったまでのことです。

そうだったのですか・・・。
奥様もこの街のご出身だったのですね。
福山さんの奥様も含め、この街にゆかりのある人みんなの思いを背負って
このイベントを毎年、来年も再来年もずっと続けていきます。
是非またお越しください。お待ちしています。

Story 04:愛する地元での集客イベント ー終ー

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