Story 04 目次

Chapter 01:出会い

ある日、福山(フクヤマ)は、都心のとある駅で新幹線に乗るまで時間を潰していた。
すると、中学生の大和(ヤマト)とその母親の会話が耳に入ってきた。
母親「あなたからもおじいちゃんに引っ越してくるように説得してちょうだいね。」
大和「伝えるけど、おじいちゃんは絶対にうんって言わないと思うよ。」
母親「そうかもしれないけど、あなたが言えば少しは変わるかもしれないからちゃんと伝えてね。」
大和「うん・・・。」

その後、福山は新幹線に乗り込み、偶然にも大和の隣に座ることになった。
駅を出発して間もなく、大和がうっかりしてお茶をこぼし、福山のズボンに少しばかりかかってしまった。 このことがきっかけとなり、二人の会話が始まった。

さっき偶然耳に入ってきましたが、おじいさんのところへ行くのですか?

はい。
本当だったら、夏休みはいつも家族みんなで
おじいちゃんのところへ行くんですけど・・・。

今回は一人で?

今年はお父さんの仕事が忙しくて、時間がないから
僕だけで行くことになりました。

そうでしたか。

おじいちゃんは田舎で一人暮らしをしているんですが、
お母さんに、僕の家に引っ越してくるように
おじいちゃんを説得して欲しいと言われてしまって・・・少し気が重いです。

おじいさんは都会で暮らしたくないと言っているのですか?

田舎の田んぼや畑があるから、それを捨てて行けないと言っています。

会話が弾んでいるうちに、目的の駅に到着した。
偶然にも目的の駅が一緒だったため、福山と大和は二人で改札を出た。
駅の外では大和の祖父厳蔵(ゲンゾウ)が待っていた。

あ!おじいちゃん!

大和、元気だったか?1年で大きくなったな。
・・・おや、その人は?

初めまして。
偶然、大和くんと新幹線で隣り合わせになった福山と申します。

私は、大和の祖父の厳蔵と申します。
今日はお仕事か何かでお越しですか?

はい。
仕事でこの町の知り合いから呼ばれて来ました。

そうですか。
もしお時間がありましたら、うちの村へお越し下さい。
ちょっとした息抜きになると思います。

ありがとうございます。
仕事が早めに終わりましたら、ぜひ立ち寄らせていただきます。

福山は村の住所と大和の携帯番号を聞き、二人と別れた後、知り合いのところへ向かった。
この知り合いとは、実は厳蔵の住む村があるH市の市長のことであり、
福山は限界集落の活性化についての相談を受けてこの場所に来たのであった。

H市では限界集落が年々増えてきており、町おこしの対策としてこれまで県外からの居住者を募ったり、
イベントを催したりと様々な手を尽くしたが、活性化に繋がる結果は得られなかった。

市長から何とか知恵を貸して欲しいと言われた福山は、面談後、厳蔵の住む村へ行くことにした。

時間がありましたので立ち寄らせていただきました。
ご連絡もせず、急に伺いましてすみません。

いいえ、とんでもありません。
こんな田舎にお越し頂くだけでもありがたいことです。

お仕事は終わったんですか?

とりあえず今日のところは終わりました。
実は、今回の仕事というのが、この村にどんどん若い人に住んでもらうことで
村全体が活性化する方法を考えることなのです。

そうだったのですか。
この村は過去に色々とイベントなどをやってきましたが、
一時的に人が集まっても、その時だけです。

近年、限界集落は年々増えており、
どこの自治体も対策が急務とされていますが、
みな試行錯誤で苦労されているようですね。

おっしゃる通りです。
若い人が集まるまでに至らず、単にその費用を村が負担するだけで
良いことはありませんでした。

テレビなどの特集に影響されて田舎に住もうと考える人はいますが、
結局は子供の教育問題や就職先の関係で断念するのが大半ですからね。

そうですね・・・。

よろしければ、厳蔵さんの畑を見せていただけませんか?

福山は、厳蔵と大和に畑や村を案内してもらうことになった。

ここから見える範囲はすべてうちの土地です。

すべて厳蔵さんの土地ですか。
すごいですね。

でも、実際に畑や田んぼとして使っているのはごく一部です。
とにかく人手が足らず、畑や田んぼにしても手が回らないものでして・・・・。

これだけ広いと、確かに大変でしょうね。

ここの土地は肥えており、水もとても美味しいので質の良い作物が採れます。
ですが、ほとんどの土地を持て余している状態です。

それは勿体ないですね。

福山は辺りを見て回った後、厳蔵の家に戻った。
厳蔵の家でお茶をご馳走になりながら、再び話を始める。

ところで、厳蔵さんは本当に若者がたくさん住むことを歓迎しておられますか?

住むのであれば大歓迎ですね。

もし村の人が皆同じ考えであれば、解決策はいくらでもあると思います。

本当ですか?
良いアイデアがあれば、是非教えてください。
この村のみんなをまとめることはいつでも出来ますので。

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