Story 04 目次

Chapter 01:プロローグ

ここは海の見える、絶景の立地に立てられた商業施設。その一角に、革細工の店がオープンした。
その店の経営者で革細工デザイナーの江田島(エタジマ)は、自分の生まれ育ったこの街が誇る砂丘をモチーフにした「砂紋柄革製品〈SAMON〉」を世に普及させるため、一念発起し起業したのだった。


砂紋(さもん)
…砂丘に水や空気が流れることでできる規則的な波状の模様

店がオープンして1年が過ぎようとしたある日、福山(フクヤマ)は偶然その店を訪れた。
商品や店内を見渡した後、江田島に質問をした。

このお店は開店して何年になるのですか?

ちょうど1年になります。

そうですか。砂紋柄のレザー製品とは珍しいですね。
今まで見たことが無いので思わず足を止めてしまいました。
柄が何とも言えず、実に美しい。ひとつひとつ異なる柄なのも素敵ですね。

ありがとうございます。

これは特殊な技法ですか?

私が独自で生み出した皮の加工法です。
この街で生まれ育ち、毎日のように砂丘を見てきました。
毎日変わるその姿を何とか商品に表現したいと思い、生み出した技法です。

素晴らしいですね。
ところで、お店のお客様が少ないような気がしますが・・・
失礼ですが、経営は順調ですか?

そうですね・・・お察しの通り、厳しい状況です。
ご購入頂いた方には大変喜んで頂き、お礼のお手紙が届くこともあります。
商品に自信はありますが、集客に苦戦していまして・・・。

そうでしたか。

売上もまだ少ないので広告に多くのお金をかけることはできませんし、
何かいい方法がないか模索しつつ、あっという間に1年経ってしまいました。

ちなみに、販売は店舗だけですか?
インターネットなどでの販売は行っていないのでしょうか。

ここ以外では、いくつか知り合いのお店に卸しています。
それから、インターネットで無料ポータルサイトへ出品しています。

店頭以外でも販売されているのですね。

でも、全然売れていませんよ。
インターネットに力を入れていきたいと思ってはいますが、
ノウハウも、業者さんにお願いする資金もなく、全く何もできていない状況です。

お節介だと思いますが、もう少し詳しくお話を聞かせていただけませんか?
実は少しばかりインターネットの事業経験がありまして。
折角のご縁と、何よりこの商品が気に入りましたので是非ともお力になりたい。
もしよろしければ、今夜、閉店後にお会いしませんか?

本当ですか?是非お願いします!

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