Story 04 目次

Chapter 01:プロローグ

大竹(オオタケ)が勤務する会社は、レトルト商品からスナック菓子、清涼飲料水など食品全般を
市場に出している大手食品メーカー。ここ数年はヒット商品が出せず売上が低迷している。
その状況を打破しろとの社命が全社員へ通達され、 大竹が属する開発部門の緊急会議が執り行われた。

会議の後、大竹は一人、カフェで肩を落としていた。

低迷を打破しろなんて言われて、すぐに売れる商品が生まれたら
苦労はしないよなぁ・・・。

大竹はPCの画面を見ながらひとりごとを口にしていた。

すみません、新聞が落ちていますよ。

大竹の鞄から新聞が落ちていた。
横に座る福山(フクヤマ)が新聞を拾い上げると、「食品フード新聞」という名前が目についた。

ああ、気がつきませんでした。
ありがとうございます。

失礼ですが、食品業界の方ですか?
食品フード新聞なんてあまり見かけないものですから。

ええ。 メーカーで商品開発に携わっています。

それはやり甲斐のあるお仕事ですね。

まあ・・・確かにやり甲斐はあるのですが・・・。
実は今、いろいろと大変でして。

というと、何か悩み事でも?

実は、恥ずかしながら私の会社は売上が低迷気味で・・・。
何とかヒット商品を生み出せと毎日言われ続けて
日々頭を悩ませています。

それは大変ですね。
確かに、今の日本はデフレが20年も続き、
なかなかヒット商品が出ない世の中になりましたからね。

本当におっしゃる通りです・・・。
私の部署でも毎年100を超える商品を世に出していますが、
1年後残る商品はたったの3つ程度です。

最近は少し売れたと思ってもすぐに類似商品が出てきますから
ロングラン商品にはなりにくい状況ですね。

お詳しいですね。
事実そうなんです・・・。

差し支えなければ教えていただきたいのですが、
商品開発の家庭では、当然リサーチなどをしておられますね?

それはもちろん。

マーケティング会社にも協力してもらっていますね?

はい。
まず草案の中から主力商品となり得るものを絞り込み、
その中でどの案が市場ニーズに合うかというリサーチを
マーケティング会社に依頼して実施しています。

なるほど。

次のそのリサーチ結果のデータをもとに
プロトタイプ(試作品)を開発し、
特定の店舗だけに出荷して売上状況を見ます。
そして、一定の反響があれば本開発という流れです。

セオリー通り進めていらっしゃるのですね。

しかし、マーケティング費用があまりにも高くつくので
すべての商品をリサーチすることはできません。
最終的な絞り込みまでは「勘」が頼りです。

勘はビジネスにおいて大切な財産とも言えますが、
どうしても人によってばらつきがでます。

そう言われればそうですが・・・。

もしマーケティングコストをもう少し落とすことができれば、
もっと全体的に商品開発プロセスを改善できますよ。

そう言われても、マーケティング部門は日々会社に人を集めて
試食調や街頭調査を行っているようです。
それなりの費用がかかるのも致し方ないかと・・・。

インターネットを活用すれば、激的にコストダウンでき
これまでにない調査結果も得られる時代になっていますよ。

どういうことですか??
色々とお詳しいようですが、同じ業界の方ですか?

いえいえ、私は福山と申しまして、
インターネット関係の会社で働く者です。

私は大竹と言います。 今のお話を聞いてもっと詳しく知りたくなりました。
よくここには来られるのですか?
これも何かの縁ということで
また色々とご指導をお願いしたいのですが。

私でよければ、またお会いした時にお話しさせてください。

ぜひ!よろしくお願いします。

ちなみに大竹さんは、スプリット・ラン・テストという言葉をご存知ですか?

いいえ、初めて聞きます。

スプリット・ラン・テストは、ABテストと同様の意味です。

ABテストなら聞いたことがありますが・・・。

商品開発を行なう際、数種類の最終候補に絞られた段階で
インターネットを通して消費者にヒアリングを行っていく。
このマーケティング手法をスプリット・ラン・テストとを言います。

なるほど。

商品を送ってアンケート調査を行なうといった事例はよくありますが、
スプリットランなら、段階的かつ低コストで
精度の高い調査を行うことができます。

段階的に低コストで?

そうです。
第一段階で、商品の打ち出しポイントとイメージの調査を行い、
その上で、第二段階では商品を実際に送って
商品そのものの感想などを調査するのです。

調査ポイントをステップに分けて調べる訳ですね?

はい。インターネットを利用する調査なので、
従来の調査のようにあらかじめ大勢の人を集める必要もなく
コストを劇的に下げられます。

確かに・・・。

さらには、インターネットを通して顔の見えない人に
答えてもらうことで、本音が聞けるというメリットもあります。

すごく勉強になります!
早速会社へ帰って次の会議で提案してみようと思います。
本当にありがとうございました。

大竹は急ぎ足でカフェを後にした。

福山はカフェの外に出ると、すぐにスマートフォンを片手に電話を始める。

もしもし、福山です。大竹さんと話をしました。
あなたが目をかけているだけあって、なかなか姿勢の良い若者ですね。
本人が望むなら、と言う条件でアドバイスをしていきますよ。
ではまた。

スプリット・ラン・テスト

スプリット・ラン・テストとは、一部の要素だけを変更した複数の素材(広告やWebページなど)を同じ環境に露出し、最も効果の高い要素を発見するテストのこと。A/Bテストとも呼ばれる。 スプリット・ラン・テストは、紙のDM、インターネット広告、メールマガジンなど幅広いマーケティング手法において、費用対効果を高めるために有効。効果が高い要素を残しつつ新たな要素を追加し、露出、検証を繰り返すほど、スプリット・ラン・テストによる効果検証は精度を増す。
(引用元:エンタープライズICTの総合情報サイト「IT-PRO」)

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