Story 04 目次

Chapter 02:スプリット・ラン・テストの進め方

福山と大竹が出会って1週間後、同じカフェで二人は再会した。
その日、大竹は何やらたくさんの資料を手にしていた。

福山さん!やっと会えました。
実はあれから一週間、毎日このカフェに来て待っていたんです。

そうでしたか、それは失礼しました。
それで何か進展はあったのでしょうか?

先日お会いしてからスプリット・ラン・テストについて
インターネットでいろいろ調べました。
会議の席で提案したところ、商品開発部長は興味を持って聞いてくれました。

それは良かった。

しかしマーケティング担当者から、
「顔の見えない消費者に聞けば、いい加減な答えしかでてこないのでは?
それを信用するのはいささか問題なのでは?」と一蹴されてしまいました。

そうでしたか。

でも、それから私なりにスプリット・ラン・テストについて
さらに情報を集めました。

なにか分かりましたか?

はい。このテストで重要なのは、
インターネットを活用して消費者に意見を聞くという行為よりも、
消費者のインターネット上での行動を分析するということですよね?

おっしゃる通り。なかなか勉強しましたね。

ありがとうございます。

スプリットランテストの最大のメリットは、
ホームページにアクセスした消費者の動線などのデータを
特定のソフトを利用して分析し、そこから答えを見つけ出せることです。

そのことを「アクセス解析」と言うのですよね。

そう。データ分析にはGoogleAnalyticsをはじめとした
無料アクセス解析ソフトを活用していきます。
利用料が月に数十万円必要な有料ソフトもありますが。

有料でなければ十分なデータは得られませんか?

目的にもよりますが、スプリット・ラン・テストであれば
無料ソフトで十分なデータは得られます。
GoogleAnalyticsを利用するとこのような分析結果が得られます。

福山は、分析結果レポートの一部を社名などを隠して大竹に見せていく。

こちらのケースでは、商品の告知を
①食べることによる効能効果を強調した内容
②食べやすさや携帯しやすさを強調した内容
の2パターンで行い、どちらが効果的かを調査しています。

無料ソフトでもここまで比較できるのですね。

またこちらのケースは、新たな商品の反響を
性別、年代別、エリア別に調査をしています。

インターネットで性別や年代別の調査ができるのですか?

はい。
GoogleやYahooでは、ユーザーが過去によく見た
コンテンツやウェブサイトの傾向をビッグデータとして
入手しています。

私がどんなウェブサイトを見ているかも?

あくまで閲覧傾向の取集ですから
個人を特定した情報にはならないので安心してください。

ホッとしました・・・。

このビッグデータをもとに、
過去にそのユーザーがどこに掲載した広告をクリックしたか、
どのようなコンテンツを見てきたかなどの情報を分析して
自動的に性別や年代を割り出しているのです。

驚きました。これなら単なる自社商品のイメージ調査だけでなく、
調査対象にしたい性別・年代の消費者そのものが何に興味を持つのか、
次にどんな商品を開発していけば良いのかといった
アウトラインを想定することもできますね。

その通りです。
グループ調査には、多くの意見が聞けるというメリットがあります。

それはこれまでもやってきました。

しかし、スプリット・ラン・テストなら、
マクロ的に消費者が何を望んでいるかも瞬時に分かります。

そこが従来の調査との違いですね。

1回目の調査結果から開発の方向性をより絞り込み、
さらに具体的な以降の調査を重ねることで、
精度の高い情報へと繋げていくのです。

なるほど。でもインナーネットを通じて
どうやって具体的な意向を聞くのですか。

そうですね。
もっともスタンダードな方法は、ランディングページをいくつか作成し、
ランディングページごとにインターネット広告を出港して
調査するやり方です。

ランディングページ?

様々なインターネット広告やリンクをクリックした際に表示される
ウェブページのことです。

理解できました。

アメリカの大統領選挙の時、オバマ大統領が
インターネットを駆使して勝利したことは有名です。
その裏ではランディングページとインターネット広告による
スプリット・ラン・テストが多用されていました。

大統領選挙にも活用?それはすごいなぁ。

このようにターゲットを変えたらんでイングページを数種類作成し、
インターネット広告で集客をして反響を比較するのです。

しかし、どのように表現して、どのように調査・分析するかは、
かなりの知識が必要となるのではないでしょうか?

そうですね。 広告表現についてはこれまでの広告会社でも十分に対応できますが、
調査・分析のプラン作成から実施までには相応の知識が必要になります。

やっぱり・・・。

調査・分析におけるおおまかなステップは、
1,商品の特徴を表すメインビジュアルの設定
2,商品の特徴を表すキャッチコピーと
  スペック(仕様・機能)を紹介するボディコピーの作成
3,ターゲットに為る性別、年齢、エリアの抽出
4,広告費の確定
となります。

なるほど。
調査をする前にこれだけの準備が必要なのですね。
ちなみに広告費は多ければ多いほど良いと思うのですが、どのくらいが相場なのですか?

広告費がどの程度必要なのかは大切な部分なので
もう少し詳しく説明しましょう。

お願いします。

まず、インターネット広告はいくつかの種類があります。
今回は、広告が1クリックされる毎にいくら、
という支払い方をするPPC広告を利用します。

PPC広告・・・。

調査対象の商品やターゲットによっても異なりますが、
ここでは商品告知の方向性1パターン毎に、最低200件の
データ獲得が行えるような予算計画を例に考えてみます。

PPC広告で200クリックを集めるということですか?

そうです。ここからは単純な算数です。
比較したい商品告知の方向性が3パターンあるとします。

まず3パターン。

次に、ターゲットについて
性別は女性のみの1タイプ、年代は20代と30代の2タイプ、
配信エリアは3エリアとします。

3×1×2×3だから・・・18パターンですね。

そう。そこにPPC広告の1クリックの平均単価が
100円になったとします。

1パターンで200クリックは集めたいという話だったから、
100円×200クリック×18パターンで・・・
広告費は36万円が必要ということですね。

さらにランディングページの作成日と調査・分析費が加わります。
ページセイさk日が1パターンあたり15万円として、
3パターン作成すると45万円。分析費10万円とすれば、
トータルで90万円程度の費用がかかります。

90万円か・・・。

しかし、これまの調査会社へ支払った金額よりはるかに安価でしょう。

確かに予算は削減されますが・・・相応の費用はかかるのですね。

ここで一番理解して頂きたいのは、
スプリット・ラン・テストはテストと名前が付いていますが、
通常の販売促進活動も兼ねているということです。

販促も?

そう。従来のグループ調査は10名程度の人に意見を聞くのが主流でした。
そのため商品の告知ができてもわずか10名程度。

そうなりますね。

しかし先ほどのスプリット・ラン・テストなら、
18パターン×200クリック、すなわち3600名に商品の告知ができます。

言われてみればそうですね。
事前に反響を取りながら告知もできるのですから、
この金額はかなり安価なものと言えますね。

ようやく気づいて頂けましたか。

ただ、これほどの緻密な分析ができる会社があるのでしょうか?
先ほど福山さんは、分析費10万円というかなり安い計算されていましたが
そのような金額で対応してくれる先はあるのですか?

おっしゃる通り、そこが問題なのです。
従来の広告代理店やマーケティング会社に依頼をすれば
同じ作業で100万円以上は請求されると思います。

100万円以上ですか!?

広告代理店やマーケティング会社では
分析者、つまりアナリストが圧倒的に少ないため、
綿密な分析はどうしても高額になってしまいます。

それでは結局コストダウンにはならないですね・・・。

まだあきらめないで下さい、大竹さん。
クラウドマネージメント協会と言う団体をご存知ですか?

いえ、聞いたことがありません。

その協会が、IMA検定というマーケティングの認定資格制度を運営しています。
この検定を大竹さんが自らが学んで資格を取得されれば、
1年後にはご自身でデータ分析をすることが可能だと思います。

わたしが分析ですか?
しかし・・・1年も待てませんよ。

そうですね。
今すぐということであれば、この協会に問い合わせれば、
高度な分析が出来る会社を紹介してくれると思いますよ。

それはありがたい!
クラウドマネージメント協会ですね。
さっそく調べてみます。

ぜひそうしてください。

ありがとうございます。
これから会議がありますので、今日お聞きした内容をレポートにして提案してみます。

頑張ってください。

  ところで福山さん、
厚かましいお願いなのですが・・・
これからも可能な範囲でアドバイスをして頂けませんか?
ぜひ連絡先を教えて頂きたいのですが。

あくまで一般論としてしかお伝えできませんが、
それでよろしければ携帯番号をお教えしておきます。

大竹は会社へ戻り、先ほど聞いた内容を企画書にまとめ会議で提案した。
前回の会議では大竹の提案を一蹴したマーケティング担当者も、この裏付けには何も言えず
開発部長からすぐにプロジェクトとして進めるように指示が出た。
同時に大竹はIMA検定を運営する協会本部へ問い合わせて、
適正な調査・分析ができる会社を紹介してもらうこととなった。

アクセス解析

特定のWebサイトに計測ツールを導入することにより、どのような事象がサイト内で起こっているか分析すること。
流入元やアクセス数、滞在時間、離脱、直帰などを知ることによって、サイトへの訪問者の環境や性質を把握し、それに適したコンテンツやデザインにすることでWebサイトのクオリティーを向上させることに役立つ。
(引用元:シナジーマーケティング株式会社「マーケティング用語集」)

ランディングページ

Webサイトの訪問者が、外部からそのサイトにやってくる際、最初に開くことになるページ。特に、他サイトに広告を出稿する際、リンク先として指定する時サイト内のページのこと。
(引用元:IT用語辞典 e-Words)

PPC広告

Pay Per Click の頭文字をとったものでクリック課金型のインターネット広告の総称。広告が表示されるだけでは広告主は宣伝費を払う必要がなく、クリックされて目的のランディングページに誘導した時に初めて宣伝費が発生する。多くの場合オークション方式を採用しており、広告主は上限クリック単価を設定する。

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