Story 01 目次

Chapter 04:ランキングの脅威

更に半年が経過した。 三原の運営するワークブーツ専門通販サイトの売上は、
実店舗全店の合計売上を凌ぐまでに成長していた。
するとある日、競合会社でネット通販大手のデジタルブラック社から、
通販サイトを含めたM&Aの話が好条件で舞い込んできた。
しかし実直な三原は「父から引き継いだ大切な会社だから身売りするなど考えられない」と
きっぱりと断った。
すると、デジタルブラック社からの様々な妨害が始まったのだった。

おかしいな。
ここ数日で急激にネットでの販売数字が落ち込んできている。
何が原因なんだろう・・・?

うーーん・・・あっ、このサイトはなんだっ!?

なになに?
「写真が誇張しているので、商品が届いたら品質が悪く残念」
「返品を依頼したが、クーリングオフ期間を過ぎているから
 履いてなくても受け付けてくれない」・・・・・・。

消費者が自由に書き込みできる、
人気のファッション情報サイトだって聞いたけど・・・。
うちの通販サイトの悪口を書き込んでいる人がたくさんいるじゃないか!!

なんだこれは!?
今までうちの通販サイトに感想を書いてくれているお客さまの声と真逆じゃないか。
この書き込みは本当にうちのお客さまが書いたのだろうか?

数日後、デジタルブラック社から靴の通販サイト人気ランキングが公開された。
三原が運営する通販サイトはそのランキングには入っていなかった。
どう考えてもランキングに入って然りのはずが。
大手からの再三の妨害に三原はどう対処していいか分からず、
またもやあの公園でぼんやりと過ごしていた。

やあ。半年以上ぶりですか?
今日は前回と一転して暗い顔をしていますね。

えぇ・・・ウェブサイトのデータ分析に力を入れたことで、
検索上位にも表示されるようになって、僕の会社のネットビジネスは急成長しました。

それはよかった。

でも、ここ1ヶ月で急激に売上が低迷し始めて・・・。

なにか原因が?

ええ。
ある口コミサイトにうちのサービスに不満があるとか、
返品を受け付けないとか、嘘の書き込みが多発していたんです。

そういうことですか。

あまりに腹が立ったので、
「うちはそんな不当なサービスはしていません」って書き込みをしたんです。

正義感が強いあなたらしい。

そしたら逆効果で、「そんな詭弁に騙されるな!」
とかいった一層マイナスの書き込みが増えてしまいました。
もうどうしてよいやら・・・。

それはまずいですね。
そのサイトに書き込まれていることは、明らかに間違っているんですね?

もちろんです!
うちの通販サイトでは、一度履いている靴でも、
クーリングオフ期間を超えていても、お客さまからの返品は受け付けていますし。

それであれば、反抗して嘘だと書き込みをするのではなく、
何もしないことが大切です。

でも、嘘の情報が掲載されたままだと、うちには大きなマイナスですよ!

ネットでは、嘘はいつか嘘として善意の人が正してくれるもの。
当事者が何か反論をすれば、逆に嘘を承認したように受け取られますから。

そういうものなんですか?

それはそうと、
その書き込みが始まる前に何か変わったことはなかったですか?

そういえば・・・
デジタルブラック社がうちの会社をM&Aしたいと
何度も言ってきましたが、きっぱり断りました。

なるほど、話が見えてきました。
きっとその会社が色々と工作をしているのでしょうね。

僕もそんな気は・・・でも相手は大手だし・・・。
何か打つ手は無いんでしょうか?

先程も言ったように、善意の人に任せておけばいいのです。

でも、ランキングサイトに掲載されていない点は
どう対処すれば良いんでしょうか?

ランキングサイト?

最近、靴の通販サイト人気ランキングを公開する
ウェブサイトができたんです。
そのサイトは大々的にネット広告も打って、
消費者からかなりのアクセスを集めています。

なるほど。

うちの通販サイトも売上規模から言えば十分にランキングされるはずなのに、
全く掲載されていないんです!

憶測ですが、これはデジタルブラック社が仕掛けた罠だと思います。

罠!?

人気ランキングサイトに掲載されたサイトは当然人が集まる。
逆に掲載されていないサイトは信用できないという印象を与え、購入の妨げになる。

確かに・・・。

でも、逆の発想もあります。

どういうことですか??
人気ランキングサイトに入らないことが何かメリットになるとでも?

そういうことです。
「当社はランキングサイトなどに情報は公開していません。
あくまで独自のスタイルでお客さまに良い商品を安く提供しています。」
という姿勢を貫けば、きっとプラスに働いてくるものです。

独自のスタイルを・・・。

そう。
「軽々しく公開しない。だから本物。」というイメージは、
特に高価なものを販売するときには有効的です。

そうか!
うちの通販サイトのトップページでも、そのことを明確に告知してみます!

いつもの素直なあなたが戻ってきましたね。

今日の話で、マイナスの書き込みは無視することに決めました。
それよりも顧客満足を高めるための対応に注力していきます!

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